【読書感想】人間に向いてない

時間が自由に使えるようになったこともあり、最近は読書に力を入れています。
いい文章を書くためにはいい本を読まないとね。とかなんとか言いながら。
まあ単純に本を楽しみたいというのが一番大きいわけなんですけど。読書は最高です。

ということで今回は、久しぶりに本の感想など書いてみようかなあと思います。
少し前に読んだ本なのですが、ものすごく衝撃的なものがあったのでそれについて紹介します。

人が変異する?

今面白い小説を読んでいる、と夫が言い出したんです。
タイトルは『人間に向いてない』。黒澤いづみさんのメフィスト賞受賞作とのこと。

どんな小説なのかと聞くと、何と「人が虫に変わってしまう」というものなんだとか。
そういう病気が蔓延しているという、何とも奇妙な世界を描いた物語なのだそう。
怖いもの見たさのような感覚で、私もその本を手に取ることにしました。

人が虫に変わると言えば、まず思い出したのはフランツ・カフカの『変身』。高校生のときに読みました。
これもまた衝撃的で、今でもよく覚えている作品です。
でも『人間に向いてない』はさらに衝撃的で、心をかき乱されるものでした。

この物語の世界では、「異形性変異症候群」と呼ばれる病気が流行っています。一夜のうちに人間を異形の姿に変えてしまう、そんな怖い病気です。
原因はわかりませんが、罹患するのは主にいわゆるニートや引きこもりの状態にある若者という特徴があります。

主人公である22歳の男性も、引きこもりの状態にありました。ある日突然、虫のような姿に変異するのです。
母がそれに気づいたところからお話は始まり、母視点で状況が語られます。

私だったらどうだろう

恐ろしくて、切なくて、悲しい。
もし自分が変異する立場だったらどうだろう。家族から恐れられたり、冷たくされたり。殺されてしまう可能性だってあるわけです。自分なんて要らない存在なんだ、という気持ちになるかもしれません。

言葉で思いを伝えたくても、伝えられない。どうすることもできない。そういう状況をどう乗り切れるでしょうか。

愛する人が変異してしまったらどうだろう。受け入れることができるのか。笑顔で付き合っていけるのか。周りの目を気にしたりせず誰かに助けを求めることはできるのでしょうか。

読み進めていくとただ不快な気持ちになるというのではなく、そんなふうに考えさせられます。

深い物語です

人が変異してしまう。そう言うと現実離れしているようですが、これは現実につながる深い物語です。

思い描いていた日々、理想の日々が当たり前のように続くとは限りません。何らかの事情で愛する人が突然姿を変えてしまう。自分自身がそれまでの姿ではいられなくなる。そんなことは全く不思議ではないはずなんですよね。

そうなればきっとショックです。嫌になります。逃げ出したくなるかもしれない。
でもそういうときこそ、どんな自分も、どんな家族も、どんな友達も、ありのまま受け入れたい。変なこだわりを押し付けずにいたい。
難しいことなのだろうけど、そう思わずにはいられません。

素晴らしい読書体験でした。感謝です。おすすめです。
人間に向いてない(Amazon)

コメント

カテゴリー

タイトルとURLをコピーしました