奈良時代も同じだった?天然痘大流行を描いた『火定』を読んで感じたこと

澤田瞳子さんの小説、『火定』を読みました。
奈良時代の天然痘大流行と、それに立ち向かう人々を描いた奥の深い作品です。2017年直木賞候補作。

これを読んで思ったのは、「その頃も今もそれほど変わらないのかもしれない」ということ。
フィクションではありますが、事実に基づいて書かれている部分も多くあるこの小説、とても考えさせられます。
奈良時代って、遠い昔のように思えませんか?1300年も前ですよ?
でも今の状況とよく似ているところがあるんですよね。

ということで、この小説を読んで感じたことを書きます。

今とよく似てる!

歴史小説って読みにくそうな印象があって、手に取るのをちょっとためらったのですが…
読んでみたらすぐに物語に入り込めました。すごく読みやすい!

舞台は奈良時代、天平9年(737年)。
京の都に天然痘が広がり、施薬院(病人の収容・治療を無料で行う施設)には患者が殺到。
医師たちは懸命に彼らを救おうとしますが、治療法が見つからず、多くの命が失われます。
感染症を恐れた人々は混乱状態です。

そんな中で現れたのが、混乱に乗じてボロ儲けを企む男。
天然痘に効くという偽りの神のお札を作り、高値で売るのです。
多くの人がそれを信じ、お札はどんどん売れていきます。
そして男の行動はエスカレート。
政治家は何もしてくれない。薬もない。そんな不満を抱く人々を先導して暴動を起こすのです。

うーん、どこかで聞いたような話だ。
お札を売る男というのは澤田さんの創作だそうですが、そういう人が実際にいたとしてもおかしくないですよね。
今もコロナに便乗した詐欺が問題になっているし。

人々がお札を信じて買うという部分については、平安時代の資料を参考に書かれているそうですが、これも今の状況と重なります。
冷静に考えればおかしいとわかるような情報でも、不安なときは真に受けずにはいられないんですよね。

暴動のシーンは衝撃的でした。
罪のない人を襲い、残酷なやり方で命を奪う人々。
集団心理の何と恐ろしいことか。
今の日本でそういうことが起こるとは思えませんが、ネット上で見られる集団攻撃はこれによく似ています。

感染症が歴史を変える

小説には書かれていないことですが、この天然痘の流行によって、日本社会は大きく変わったようですね。
(そのことについては池上彰さんの番組やネット上の情報を見て勉強しました)
当時の日本の総人口の約3割、100万人以上が亡くなったといわれています。
その影響は相当のものだったでしょうね。

天然痘流行語の政府の対応としては、税金の免除や公的基金の貸付、米の配布といった措置が行われていたのだとか。
奈良時代にもそんなことがあったんですね。

743年には、聖武天皇の復興政策として、墾田永年私財法が発令されました。
自分で新しく切り開いた土地は自分のものにできる、という法律ですね。
(743年=墾田永年私財法というのはなぜか記憶に刻み込まれています。「墾田永年私財法」という響きが何となく好きで)

そしてその土地を守る「武装警護集団」が生まれ、それが武士の始まりとなったといわれているのだそう。

また奈良の大仏が建立されたのも、天然痘の流行がきっかけだったんですね。犠牲になった人々の供養のためだったとか。

なるほど、そういうことだったんですね!
何となく知ってるキーワードたちがやっとつながった!って感じです♪

今回のコロナ騒動でも、いろんなことが大きく変わるかもしれませんが…
よい方向に変わることを願わずにはいられませんね。
私たちは今、どう生きるべきなのでしょうか。
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