【読書感想】生きること・歳を取ることを見つめなおせる『百年法』

老化してきたな、と感じることが多くなってきました。困ったものです。
記憶力が低下している気がするし、エネルギーも少なくなっている気がする。
まあ、当たり前ですよね。生きてるんだから。こうしている間にもどんどん歳を重ねているんだから。

でも、もしその当たり前が当たり前じゃなくなったら、何が起こるでしょうか。人が歳を取らなくなったら。いつまでも生きていられるとしたら……。

今回はまたまた、最近読んだ本のお話。老化すること、生きることについて考えさせられる小説、山田宗樹さんの『百年法』の感想です。

不老不死の世界

この物語の世界では、多くの人が若いままの状態で暮らしています。
実年齢は100歳でも、見た目は20歳だったりするんです。

なぜかと言うと、「HAVI」という処置を受ければ、その肉体が老化することはなくなるから。
「ヒト不老化ウイルス(HAV)」を体内に取り込むことで、処置を受けたときの状態をいつまでも保つことが可能になるのです。
病気や事故に見舞われない限り、命を落とすことはありません。

ここだけを見ると、なんて素晴らしいんだろうという感じですよね。
不老不死。そういう技術が存在したらどんなにいいだろう。私もそう考えたことがありました。
見た目が若いままだから、例えば100歳差の恋愛なんていうのもあり得る。すごくないですか?

でも、いいことばかりではありません。それを実際に導入するとなると、大きな課題が待ち受けているのです。

処置を受けた人が生き続ける場合、子どもが生まれれば人口は増える一方。
また社会が新しく生まれ変わっていくこともありません。
そんなことではいけない。

そこで必要になるのが、百年法。
処置を受けてから100年経てば、強制的に安楽死させられるという法律です。
この法律が、混乱を引き起こしました。

答えの出せない問題

これを読みながら、私も登場人物の仲間になった気分で悩みました。
命が終わる日。それが法律で決められるってどうなのか。
まだ生きられるのに、生きたいのに、その命を絶ち切ってしまっていいのか。
でもだからといってその法律をなしにしてしまえば国は大変なことになる。それでもいいのか。
死を意識することのなく生きていたら、人としておかしくなってしまわないか。
簡単に答えの出せない問題です。

私だったら、頭ではこの法律が必要だとわかっていても、自分の終わりが近づけば冷静ではいられなくなりそう。この本に登場するテロリストのように。
怖いというより何より、別れがつらいだろうなと思います。
こんなふうに悩ませる処置なんて、最初から受けないほうがいいのかもしれません。

でももし受ける人が多数派で、受けていなければ「なんで受けないの?」と不思議がられるような世界だったら、私も受けてしまうんじゃないか、という気がします。
受けるか受けないかを選択するというのではなく、「そういうものだから」と。

よく考えると、それってすごく危険なこと。
「何となく」「みんながやってるから」という安易な理由で重要な判断を下すなんて、恐ろしいですよね。
これはこの問題に限らず、私の日常のいろいろな場面で言えること。
自分の頭で考える。そのことだけは忘れないようにしたい、と改めて思うのです。

ポジティブに歳を重ねたい

読み終わった今、「自然に生きる」ことの意味をしみじみかみしめています。
どんどん歳を重ねていく。それは悲しいことかもしれない。
だけど、歳を取るからこそ得られるものもある。歳を取るのも人間にとって大事な仕事なのかもしれません。
老化がどうしても避けられないことなら、前向きな気持ちで受け止めたいですねー。

ちなみに今30代の私。10代や20代の頃に比べたら失ったものはいろいろとありますよ、それはもう!
でも歳を重ねてよかった、とも感じます。あの頃よりも「落ち着けた」から!
穏やかな気持ちで日々を送れるようになりました。

さて、これからどんな生き方をするか。
少ししかないおやつをじっくり味わって食べるみたいに、限られた時間を丁寧に使って、よりよい人生を描いていきたいものです。

皆さんもよかったら読んでみてください。
百年法(上)
百年法(下)

コメント

カテゴリー

タイトルとURLをコピーしました